東京都現代美術館(江東区三好4)で8月29日から、戦後日本の抽象彫刻家・造形作家、多田美波の約70年にわたる創作活動をたどる展覧会「多田美波―光、凛と ゆれる」が開かれる。
多田は、生涯で約200点の彫刻作品と約500点の建築関連作品を手がけた。ステンレスやガラス、アクリルなど高度経済成長期に普及した工業素材や加工技術を積極的に取り入れ、光の反射や透過、屈折、揺らぎを生かした作品を制作。美術館だけでなく、公園や駅、市庁舎、ホテル、劇場などにも作品を残した。
同展は多田の没後初となる大規模回顧展。多田美波研究所の全面的な協力を得て、初期の絵画から各時代の彫刻、本人が「光造形」と呼んだシャンデリアを含む照明作品まで、約70点を紹介する。建築造形のパーツや写真、スケッチなどの資料も展示する。
外光が差し込むアトリウムを含む約1500平方メートルの地下展示室と、隣接する屋外展示エリアを会場に使用。初期のブロンズ彫刻をはじめ、アクリルやステンレスに周囲の景色を映し込む作品、陶板を使った彫刻などを通じ、素材と光、空間の関係から多田の造形表現をたどる。
現存しない作品や建築と一体になった照明作品の再制作・再構成も見どころの一つ。1963(昭和38)年に銀座の松屋サロンに設置された「チェーンデリア」を原寸大で復元する。同作は洗面台などにも使われるボールチェーンを素材としたシャンデリアで、多田が皇居・新宮殿の光造形を手がける契機になった作品だという。
リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションに設置された光造形「瑞雲」(1973年)の一部も、制作当時のクリスタルガラスのパーツ約3000個を使って再構成する。
多田は1924(大正13)年、台湾・高雄生まれ。1944(昭和19)年に女子美術専門学校(現・女子美術大学)西洋画科を卒業し、1962(昭和37)年に多田美波研究所を設立した。代表作に東京都現代美術館所蔵の「周波数37306505」(1965年)、東京国立近代美術館の屋外彫刻「キアロスクーロ」(1979年)などがある。皇居新宮殿の光造形や帝国ホテル 東京の光壁「黎明」など、建築空間でも数多くの仕事を残した。2014(平成26)年に逝去。
同館広報担当者は「外光が差し込むアトリウムを含む地下展示室と屋外展示エリアも生かし、素材、光、空間との関係を軸に、多田美波の造形世界に迫る。現存しない作品や照明作品を本展のために一部再制作・再構成し展示する点も見どころ。約70年にわたる作家の仕事を改めて俯瞰(ふかん)する機会になれば」と話す。
開館時間は10時~18時(11月の金曜は20時まで)。月曜休館(9月21日、10月12日、11月23日は開館、9月24日、10月13日、11月24日は休館)。観覧料は一般1,600円ほか。12月6日まで。